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第三連載 ここが知りたい、税金についてQ&Aで解説
◆ 株主優待券の税制 ◆
税理士 谷澤 佳彦 氏
日本経営士協会 理事
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谷澤佳彦先生は谷澤佳彦税理士事務所の所長で、税理士業
を中心にご活躍中です。
また、最近は「日本経営士協会 首都圏支部長」として活
躍なさっております。このシリーズでは税金について税理士
として、ご活躍の谷澤佳彦先生、質問は経営士俵一史先生が
致します。
Q:株式投資に際して、投資金額に対する配当金の割合を実質利率として計算し
て、投資の尺度として捉えることができます。昨今はこれに、株主優待券に
よる利益を配当金に加算して計算する方法もあるようですね。
ところで、この株主優待券に関してですが、受け取る側の税務はどうなって
いますか?
A:法人の場合、優待券により享受する利益と本来支払うべき経費が相殺されま
す。別段経理処理を行わなくても、収支トントンとなり、何ら問題はありま
せん。但し、金券ショップに売却した場合には、売却金額を雑収入に計上す
る必要があります。
Q:では、個人事業主の場合にはどうなりますか?
して利用する分については、事業所得の経費となります。雑所得と事業所得
は損益通算可能(注:雑所得が赤字の場合は通算できません)ですので、特
別に経理処理を行う必要はありません。
Q:個人事業主でない場合には、雑所得として申告しなければならないのでしょ
うか?
A:そうです。金券ショップに売却した場合も同様、雑所得として申告義務があ
ります。
Q:株主優待券による利益を申告している人はいるのでしょうか?
A:統計資料がないので何とも申し上げられませんが、申告している人は殆どい
ないでしょう。そもそも、税務当局が実務上、課税を行うには相当無理があ
ります。株主優待券を受領しても使用するとは限りません。また使用実績を
把握することや使用金額を確定することが困難なケースが多々あります。
更に、所得税確定申告義務のないサラリーマン等は、給与所得以外の所得が
20万円未満であれば申告する必要はありません。住民税に関しては、雑所
得としての申告義務がありますが、これも税務当局の調査に限度があります
Q:税務当局は課税のために動いていないのでしょうか?
A:そのようなことはありません。会社の裏金捻出のために持ち込む人もいます
から、金券ショップでの大口買取先については調査している可能性がありま
す。しかし、殆どの優待券受領に関しては、課税補足ができないのが実態か
と思います。
Q:それでは株主優待券を発行する側はどうなるのでしょうか?
A:株主優待額を交際費として課税処理します。
Q:ありがとうございました。