■■ 2 再会と転機 6
【本書の読み方】
本書は、現代情景と階層部分を並行して話が展開する新しい試みをしています。読みづらい部分もあろうかと思いますので、現代情景部分については【現代】と、また過去の回想シーンについては【回想】と表記します。
【回想】
竹根の『二十一世紀を迎える前に激変する印刷業界の技術と経営』という講演が終わるとすぐに講師控え室に幸は飛んで行った。そこには、竹根とその部下らしい五〇代の男、主催者側の人二人がソファーでお茶を飲んでいた。
竹根は、いきなり飛び込んできた男に一瞬びっくりした様子であったが、すぐに立ち上がった。
「幸さんではありませんか?」
「そうです、幸です。先生、よく覚えてくださいましたね。ご無沙汰しています」
講演会主催者側の一人が、気を利かせて席を空けてくれた。
「あっ、ありがとうございます。すぐに失礼しますので、お構いなく」
幸は、そう言うと竹根と名刺交換をした。
「まさか、竹根さんが経営コンサルタントになっていらっしゃるとは知らず、ご無沙汰を重ねています。今日の講演を聴いて感動しました。是非近いうちにゆっくりお話をしたいと思いますので、またご連絡いたします」
幸は、挨拶を済ますとその場を去った。