■■連載小説 経営コンサルタント竹根好助の先見思考経営 32
【本書の読み方】
本書は、現代情景と階層部分を並行して話が展開する新しい試みをしています。読みづらい部分もあろうかと思いますので、現代情景部分については【現代】と、また過去の回想シーンについては【回想】と表記します。回想シーンも、回想1は1970年代前半にはじめて幸が竹根に会ったときと、回想2は、その十数年後、二度目にあったときの二つの時間帯があります。
ブログ発行の不手際により、一部の原稿が重複していることがあるかも知れませんので、ご容赦ください。
■■ 3 アメリカ初体験 8
【回想1】
ロサンゼルス市は広大な広さを持つ、ニューヨークやシカゴに次ぐ大都市である。ニューヨークのような高層ビルはダウンタウンと呼ばれる、市の中心地以外にはほとんどなく、空港からは見えない。それでも空港周辺には、ホテルらしき高い建物がたくさんある。その中でも竹根たちのホテルは十数階建てで、周りのホテルより大きい。全米に三百以上のホテルを有する指折りのホテルチェーンである。竹根には通常は手の出ないホテルであるが、お客様の手前、清水の舞台から飛び降りる気分で奮発した。
ホテルでは、竹根と幸は同室にすることにした。安給料の竹根は少しでも安く上げたいところである。アメリカに慣れていないので不安な幸にとっては竹根と同室の方が心配ないのであろう。お金持ちのお坊ちゃま相手で気が重いと思っていた竹根であるが、短い間に幸に親近感を抱くほどになっていた。
飛行機は午後二時頃着いたのに、空港に二時間以上も留め置かれたことになる。そのあとホテルに入るまでなんだかんだと時間が経ち、冬のロスはすでに暗くなっていた。
「まずは一風呂浴びたい心境ですが、そうもしてられないですよね、竹根さん。とにかく洗面具や下着、スーツケースに詰めた物は何もないのですからね」
「まず、それを買いそろえ、われわれも食事をしなければなりませんね。たぶん、ホテルでもそれらを買いそろえることはできると思いますが、高くて、ばかばかしいですね」
「でも、竹根さん、いまはそんなことを言っている状況ではないですよ。多少高くてもなければこまります。幸い、お金は胴巻きにくるんできたので、心配はありません」
<続く> 次回掲載をお楽しみに
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