keieishi17’s diary

40年余の経営コンサルタント経験から語る

■■想定外の息子の行動 【連載小説】経営コンサルタント竹根好助の「先見思考経営」 No.146

■■想定外の息子の行動 【連載小説】経営コンサルタント竹根好助の「先見思考経営」 No.146
 昼は休みに読むブログ連載小説です。経営コンサルタントとどのようにつきあうと経営者・管理職として、プロ士業として一歩上を目指せるのか、小説を通じて体感してください。
【本書の読み方】 脚注参照
■13 初めてのイベント 2 通算146回 想定外の息子の行動
 小さな印刷会社ラッキーでは、荒れた取締役会であったが、五カ年計画が何とか可決された。
 新事業への取り組みは決まったもののそれを誰が担当するかが問題となった。なんと営業部長の息子であるまだ若い係長が抜擢されなど、人事面でも思いもよらない方向ではあるが、いよいよ五カ年計画がスタートした。
 幸は、荒れた役員会の思い出から、我に返ると、そこはまだ靖国神社の茶室であった。三代目になるであろう長男の育猛のことが気になって仕方のない幸である。
 その一環でもあるが、幸は竹根が発信しているブログに関心を持った。
【現代】 
 茶室から神池庭園の水面を眺めながら思い出に浸っていた幸を、竹根の声が襲った。
「先ほど、こちらに来る前にちょっと育猛君と話をしました」
「私が先生をお待たせしている間にですか?」
「そうですよ。だからたいしたことを話したわけではないですが、小さい頃の彼しか知らなかったが、なかなかやるではないですか?」
 竹根が何を言いたいのか飲み込めない幸である。
「育猛君が、育さんの意をくんでコンピュータ・システムについて研究しているようです」
「エッ?コンピュータ・システムについてですか?私は彼にそんな話をした覚えはないですが・・・」
「何かの折りにちょこっと社長が漏らした言葉から、彼がそれを感じ取ったのではないですか」
「あの、育猛がですか?信じられませんね」
「育さん、昔育さんが、印刷業界の技術について勉強しているようだと言ったときに、会長が同じことを言ってましたよ」
「先生、急に私のことに話をすり替えないでくださいよ」
「あのとき、会長は、育さんが自分の後を継ごうと言う意思があることを確信したんですよ」
「会長がですか?あんなに私のことをくそみそに言っていたくせに?」
「会長は苦労人だから、人の深層心理を読むことができるんですよ。育さんのことを高く買っていました」
「今日の今日まで、オヤジがそんな目で俺のことを見ていたとは・・・」
 幸の目が心持ち潤んでいるように竹根には見えた。それを見られまいと開け放たれた雪見障子の上の方をじっと見つめている。
 竹根は、池の方を黙って見ていた。
「育猛君がね、私がどこかで講演したのを聞いたことがあるんだそうだ。それを契機に私が書いた本を買い込んで、コンピュータ・システムについて勉強したようですね」
「あいつがね・・・この間の夕飯時の会話は、その伏線だったのか」
「育さん、育猛君は、やはりあんたの息子ですよ。もっと、信じてやったらどうですか。会長が育さんをアメリカに出張させたときの気持ちがわかりますか?」
 幸は、無言であった。
 池で、鯉が跳ね、そのあとに幾重にも輪が広がった。
< 次回に続く お楽しみに >
■■ 脚注
 本書は、現代情景と階層部分を並行して話が展開する新しい試みをしています。読みづらい部分もあろうかと思いますので、現代情景部分については【現代】と、また過去の回想シーンについては【回想】と表記します。回想シーンも、回想1は1970年代前半にはじめて幸が竹根に会ったときと、回想2は、その十数年後、二度目にあったときの二つの時間帯があります。
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