■■【元気な会社】ファーストクラスの車体プレスメーカーをめざす 34
自動車の軽量化を実現する新しい技術が今、栃木県足利市深井製作所で芽吹こうとしている。目の前に置かれた板上に正六角形を隙間なく配列する加工を施したアルミニウムや鉄板。だが、これこそが軽量化につながる技術として、自動車や電機メーカーなど多業種の関係者の注目を集めるエンボス成形技術だ。
同社のエンボス成形は形状はもちろん、軽量化が大きな特徴になる。たとえば、板厚0.5ミリメートルのアルミ板の剛性を100とした場合、エンボス成形を施せば板厚0.35ミリメートルに薄くしても剛性は97とほぼ同等になる。
同社の主力は自動車用のフロントフレームやラジコアなど重要骨格部品。
今回のエンボス成形技術も主力の自動車向けに開発した技術だが、「実は自動車以外の業界からの引き合いが最も多い」と深井社長は苦笑いする。
「技術者を採用しない年があると年齢構成に断層が生まれ、数年後に必要な人材がいなくなる。バブル崩壊後、経営が苦しい時期も毎年必ず学生を採用してきた。彼らが今、中堅層として開発を引っ張ってくれている」と、深井社長は定期採用の意義を語る。
大手鉄鋼メーカーと共同研究し、異なる材質・板厚の材料を溶接で接合する車体骨格製造技術のテーラードブランク(レーザー・プラズマ)工法を実現させ、補強材などの部品点数を削減、軽量化している。
2枚の金属の間に耐熱・防振といった用途に応じた素材を挟み込みプレスする。
軽量化では樹脂をはじめとした材料置換の例が多いが、既存のプレス設備や接合技術で実現できる技術であり、すでに特許も取得している。
軽量化では樹脂をはじめとした材料置換の例が多いが、既存のプレス設備や接合技術で実現できる技術であり、すでに特許も取得している。
今、自動車業界は国内自動車販売台数の減少で、完成車メーカーは海外生産を加速させている。そうした中で同社は独自技術を武器に国内での生産にこだわる。
約5億円を投じ、本社大月工場内のプレス工場を拡張し、1000トンのプログレッシブプレス機を導入した。プレス工場内では現在、2700トントランスファープレス機1台が稼働しており、深井社長は「1200メガパスカル級のハイテン材の生産に対応できる体制が整う」と自信をみせる。
同社は次の三カ年中期経営計画の中間地点にいる。最終目標は売上高に対する経常利益率5%。深井社長は「3%はすでに達成し、やっと"エコノミークラス"に座ることができた。次は"ファーストクラス"を狙う」と目標を高く掲げる。ゴールへむけたアクセルはすでに踏み出されている。
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【ポイント】 開発と生産で生き残りへ
開発に加え、実は生産技術も突出した力を持つ。ロボットを活用した生産ラインの自動化システムではプランニングから設備の設置、稼働までを外販。国内だけでなく韓国・起亜自動車など海外でも採用実績がある。
【ポイント】 開発と生産で生き残りへ
開発に加え、実は生産技術も突出した力を持つ。ロボットを活用した生産ラインの自動化システムではプランニングから設備の設置、稼働までを外販。国内だけでなく韓国・起亜自動車など海外でも採用実績がある。
近年、完成車メーカーが車体のプラットフォームを共通化し、プレスメーカーを取り巻く環境は厳しい。こうした中で、「生き残りの鍵は技術。ウチは日本一の2次部品メーカーを目指す」と深井社長。その自信は開発・生産の両面の確かな技術が支えている。
提案型企業への転身がスムーズに行くかどうか、それはクリティカル・シンキング的な発想がないと、お題目を唱えるだけで終わってしまうことが懸念されます。