keieishi17’s diary

40年余の経営コンサルタント経験から語る

■■【時代の読み方】 リニア新幹線への期待と課題 連載2/3 2015/01/01

■■【時代の読み方】 リニア新幹線への期待と課題 連載2/3 2015/01/01
 
謹賀新年
 本年もよろしくお願いします。
 時代の流れを時系列的に見ると、見えないものが見えてきます。NHKの放送や新聞・雑誌などを見て、お節介心から紹介しています。
■ リニア新幹線への期待と課題 連載2/3 2015/01/01
 1964年東京オリンピックの年に、日本人の期待を一手に集めたのが「夢の新幹線」ともいわれた今日の東海道新幹線の開業です。それから50年後の2014年12月17日に、最高時速500キロで、東京の品川と名古屋の間を40分で結ぶリニア中央新幹線が着工されました。開業は、13年後の2027年を目指しています。
 世界に例のない技術が導入されていますリニア中央新幹線ですが、期待、疑問、不安が入り混じっているのではないでしょうか。
 NHKの中村幸司解説委員のお話を中心にまとめてみました。
【これまでの記事】
  ◇1 リニア新幹線に関するQ&A
◇2 リニア新幹線の効果と課題
 開業によるさまざまな効果も期待されています。
 品川・名古屋間40分というのは、費用を考えず、時間だけのことを考えますと名古屋が東京の通勤圏内に入ることになります。その経済効果を高く評価するエコノミストも多いようです。民間のシンクタンクの試算によりますと、移動時間の短縮などに伴う経済効果は、年間およそ3700億円にのぼるとされています。
 現在の東海道新幹線では、「のぞみ」の運転本数が減り、「ひかり」や各駅停車の「こだま」中心のダイヤに変更されます。こだまやひかりに乗ったことのある人はご存知のように、現状では通過待ちが非常に多いです。それが少なくなるため、静岡など途中駅までの所要時間が短縮されるようです。
 リニア新幹線の実現に、期待の声は大きく、2020年のオリンピックに間に合わせるようにと言う声さえ上がりました。しかし、安全性を重視した準備や工期の短縮は不可能で、それはきっぱりと断られたそうです。
 とはいえ、巨大プロジェクトだけに「環境への影響」、「工事費」の問題、「安全性の向上」など、課題は山積のはずです。
 まず「環境問題」を挙げられます。
 リニア新幹線は、全体の86%がトンネルです。トンネル部分は、沿線への騒音は抑えられますが、一方で環境への影響が懸念されます。
 自然景観への影響もありますが、忘れてならないのが工事残土の問題です。
 青函トンネルの時もそうでしたが、実際に掘られるトンネル本坑、非常口に通じるトンネル、工事で出た土砂を運ぶための「工事用トンネル」、地盤の調査などの「先進坑」と、いろいろなトンネルが必要です。
 このようなトンネルの掘削で発生する土砂の量は、品川・名古屋間全体で、5680万立方メートル、東京ドームおよそ45杯分です。このうち、具体的に処分先が決まっているのは、15%にとどまっています。
 使い道がない土砂については、山間部に置き場を作って土に植林することも検討されているようですが、植林しても周辺の山と同じような深い緑になるまでには、数十年の年月がかかります。
 さらに、地下の水の流れが変わることによる影響も懸念されています。
 例えば、大井川については、地下の水がトンネルの中に浸み出すため、水の流れる量が1秒あたり12トンだったのが、10トン弱にまで減ると推測されているようです。
 地下の水が少なくなって、湧水や小さな支流の水が減るということも想定されます。その結果、植物が生息できなくなったり、動物や人間の生活への影響など、予測不可能な問題が発生したりしそうです。 <3/3へ続く>
 
■ リニア新幹線への期待と課題 連載1/3 2014/12/31
 1964年東京オリンピックの年に、日本人の期待を一手に集めたのが「夢の新幹線」ともいわれた今日の東海道新幹線の開業です。それから50年後の2014年12月17日に、最高時速500キロで、東京の品川と名古屋の間を40分で結ぶリニア中央新幹線が着工されました。開業は、13年後の2027年を目指しています。
 世界に例のない技術が導入されていますリニア中央新幹線ですが、期待、疑問、不安が入り混じっているのではないでしょうか。
 NHKの中村幸司解説委員のお話を中心にまとめてみました。
◇1 リニア新幹線に関するQ&A
 リニア中央新幹線は、品川から、南アルプスを貫いて、名古屋まで建設されます。工事費は5兆5235億円と見込まれ、全額をJR東海が自己資金でまかなうと言いますので、その時点で「大丈夫?」と疑問に思った人もいらっしゃるでしょう。
 近年、様変わりをしている品川駅のリニア中央新幹線のホームは、東海道新幹線の品川駅の真下、地下40メートルに建設されます。
 まず、懸念されるのが深度の大きさです。乗り換えに不便があるのではないかと懸念されますが、東京には、この程度の深さを走る地下鉄もあり、さほど懸念することはなさそうです。
 次に荷になるのが強力な超電導磁石を電磁波の影響です。列車に乗り込む時は、乗客や電子機器等が磁石の影響を受けにくくする「磁気シールド」で囲まれた特殊なゲートを通るそうです。客室も磁気シールドで囲まれています。
 安全性も気になりますね。
 リニア新幹線の研究は、いまから52年前、東海道新幹線開業前の昭和37年に始まったといいますから、その地道な努力には驚きです。
 宮崎の実験線では、超電導状態を安定して保つ磁石の研究や人を乗せる車両の開発など実用化に向けた実験が続けられたことは、まだ記憶にあります。宮崎で実験している当時は、夢のまた夢と言っても過言ではありません。
 その積み上げが、今日の新幹線での経験にプラスされ、安全性は高いようです。
 総工費が5.5兆円という大きな予算が組まれるのですから、それが運賃などに影響して、高額な支払が求められることも気になりませんか?ところが、東海道新幹線の指定席料金に700円上乗せした金額と言いますから、驚いたのは私だけではないでしょう。
 全席が指定であることはもちろんで、1編成で、およそ1000人の乗客を運ぶことができます。品川駅を発車してから2分ほどで、時速500キロに達します。ほとんどがトンネルの中を通るため、富士山ですら見られるのは一瞬だそうで、景色を楽しむローカル列車の風情はなさそうです。
 
■ ルーブルはなぜ下落、プーチンはどう動く 2014/12/30

 クリスマスを前にして、ロシアの通貨ルーブルが急落しまし、ルーブル安が続いています。ロシアでは、中央銀行が外貨建ての債務の返済期限が迫っている企業の借り換えを支援するため、金融機関に外貨建ての融資を行うと発表しました。ルーブル安の影響が拡大しないよう、プーチン大統領が異例の対策に乗り出しました。

 その背景は何なのでしょうか?NHKの石川一洋解説委員の番組を中心にまとめてみました。

◇1 なぜ、ルーブル安になったのか

 ロシアの中央銀行は、政策金利を大幅に引き上げましたが、ルーブル売りは止みませんでした。一時は1ドル80ルーブルを切るまで急落しました。その後ルーブルは持ち直し、2014年クリスマスには、1ドル55ルーブル前後です。これは年初めに比べてルーブルの価値が二分の一近くに落ちたことになります。

 では、なぜルーブルがこれほどまでに急激に下落したのでしょうか。

 主な原因は原油価格の下落です。

 2014年6月には、原油価格が100ドルを超えていましたが、ウクライナ危機が起こったのにもかかわらず、ルーブルのレートは1ドル35ルーブル前後で推移していました。しかし原油価格が下落してくるとルーブルも急落してきました。その結果、石油やガスに経済を依存するロシアの先行きに不安が広がったのです。1998年のロシア政府債務不履行の時のようにロシア金融危機が繰り返すのではないかとの恐れもささやかれています。

 石川解説委員は、その時と比較して、ロシア経済の現状は大きく異なるので、その心配はないとみています。

 その当時、ロシアは国が抱える巨額の債務を返済するためにルーブル建ての短期国債を発行し、国債の返済に回す自転車操業の状況でした。しかも外貨準備高も200億ドルしかなかったといわれています。

 現在、ロシアは貿易黒字国であり、また経常収支の面でも原油価格の下落にも関わらず黒字です。外貨準備高も4000億ドルを超えていて、国家予算は歳入と歳出が、1バレル60ドルなら均衡するでしょう。すなわち国家財政は危機的な状況ではないからです。

 一方、欧米の銀行から借り入れた巨額の民間債務があるのが問題です。

 原油価格の下落に伴い、ロシア中央銀行も来年はマイナス5%のマイナス成長と見るなどロシア経済は後退局面に入ったとの見方が強まっています。

 そのような中で、ウクライナ問題で欧米が金融制裁をとっています。ロシアの銀行や民間企業が新たな資金調達の道を制限され、債務の返済に不安が生じています。

 12月中旬には、そうした不安を背景に投機的なルーブル売りに加え、新年を控えて一般市民の間にもルーブルからドルに換えようとするパニックが広がり、ルーブル急落してしまったのです。

 ルーブル安は、OPECも関連していることは意外と見落とされているのではないでしょうか。

 アメリカのシェールガスが、原油価格より高めの今、オペック諸国がロシアをたたいて、原油市場での立場を強固にしようという算段があります。原油市場のだぶつきの中で、本来なら生産調整を図るはずのOPECが、生産調整をせずにいるのは、ロシアバッシングと考えるのは言い過ぎでしょうか。


2 プーチン政権にどの様な影響が

 では今回のルーブルの急落がプーチン体制の安定にどのような影響を与えるのでしょうか。石川解説委員によりますと次のように解説されています。

 プーチン大統領の支持率は、今も80%を超えています。経済危機が深まるのに支持率が高いのは、欧米による制裁が原因です。

 もしも欧米との関係が良好で経済危機が起きたならば不満はプーチン大統領に向かったでしょう。しかしロシア人は、我慢強く、外敵が存在するときは団結する傾向があります。経済の悪化の責任は欧米にある、あるいは欧米との対立の中で支払うべき対価だと考えている人も多いのです。

 プーチン大統領はロシアの国益を守っているだけだと述べて、表向きは強気の姿勢を崩していません。

 プーチン大統領「熊を静かにしておけば、森の周りの子豚を追いかけることもなく、木の実やはちみつを食べているだけでしょう。でもいつも熊を鎖につなごうと追いかけ、捕まえたら牙や爪を剥ごうとしているのです」(2014年12月18日記者会見)

 2000年大統領就任とともにプーチン大統領は、安定したルーブル、強いルーブル、ドルや円と同様海外でも通用するルーブルの確立を唱えました。実際ルーブルレートは安定し、外貨との交換可能な通貨となりました。

 それだけにルーブルの急落は、ロシア人への心理的なショックは大きくのプーチン路線への不安があるでしょう。安定した強いルーブルこそが、プーチン時代の象徴であり、ロシア国民のプーチン大統領への信頼を支えていたからです。

 ルーブルの下落は、輸入品の価格の上昇をもたらし、庶民の生活にも直接影響を与えます。食料品や医薬品、家電など、輸入に頼る生活必需品に頼った暮らし向きには、これらの値上がりが庶民を直撃することになります。

 そこで、プーチン大統領は、何とかして国民の不満の拡大を防がなければなりません。彼がまずとると思われることは、ロシアの国内産業の生産を、危機を利用して回復させことでしょう。

 しかし、ルーブル防衛のためにロシア中央銀行は金融引き締め策を取っています。これでは生産に資金がまわらないでしょう。インフレと景気後退が並行するスタグフレーションに陥る危険性があります。ルーブルの安定と経済の活性化をどのように両立するのか、プーチン大統領の経済チームの力量が問われています。


3 ルーブル安が及ぼす世界経済

 ルーブルの下落とロシアの抱える民間債務の問題は、ロシアに留まらず、ヨーロッパにも影響を及ぼすでしょう。

 ヨーロッパの金融機関は、2014年中頃まで続いた原油高の中で、ロシアに膨大な資金を貸し付けてきました。今後原油価格の下落とウクライナ危機に伴う金融制裁が続けば、ロシアの民間企業が債務不履行に陥ることは必定です。その結果、ヨーロッパにも信用不安を広がり、総出なくても厳しいヨーロッパの経済ですが、これに追い打ちをかけることになりかねませんので、ロシアと欧州が共倒れを何としても回避する必要があります。

 双方が共倒れすれば、ウクライナ経済の復興も望めなくなるでしょう。それがアメリカにとっても、ロシア経済の破たんが世界経済全体を混乱させ、それが国内リスクとなります。

 経済危機を避けるためにもウクライナ東部の安定化に向けたプーチン大統領の具体的な行動が望まれます。

 そのような中で、ロシアが進めているのは、中国をはじめとするアジア、新興国との関係の強化です。

 プーチン大統領は2014年秋に、ロシアへの制裁に参加していない中国、トルコ、インドを公式訪問しました。エネルギーの輸出先をヨーロッパから東方に展開することが目的です。今やロシアにとって最大の貿易相手国である中国へは、最新のステルス戦闘機や防空システムの輸出交渉を進めています。軍事面も含めて関係強化する危険な動きです。

 これが行き過ぎますと、欧米との対立はウクライナ問題での緊張が緩和したとしても、ロシアと欧米諸国との修復が困難になります。中には、ロシアを仮想敵国とする、冷たい関係が続くだろうとさえ、ささやく人がいます。


4 日本がとるべき対ロシア政策

 ロシアが苦境に立っていることは否めません。このような中、日本は何をなすべきなのでしょうか。

 ロシアは、中国だけに依存しないようにインド、トルコなど、日本とも親交の深い新興国とも結びつきを強化しようとしています。彼らも経済がらみとなりますと、日本だけにいい顔をしていられません。

 それを放置しておいては、せっかくこれまで築いてきた良好な関係が、比重面で薄くなりかねません。

 その中で、プーチン大統領は、安倍首相との人間関係を重視し、対日外交のさらなる見直しを図る可能性が高いです。プーチン大統領の日本公式訪問への準備が動き出していますが、日本への姿勢が強化される可能性が高いです。

 2015年は、第二次大戦後70年という節目の年です。その中でロシアにとって5月9日の対ドイツ戦勝記念日が重要な節目です。すでに習近平国家主席は出席を決めていますし、安倍総理も含めて、オバマ大統領、メルケル首相など各国指導者を式典に招待するでしょう。このときに、各国がどの様な対応をするのか、ウクライナ問題に対してどの様な行動をとるのか、目を離せません。

 とりわけ、経済面で厳しい状況ですので、これを機会に、エネルギー問題だけではなく北方領土問題もからめて、安倍政権がどれだけ精力的に動けるかが、ロシアだけではなく、日本の問題としても重要な課題と言えます。

 原油価格の下落が引き金となり、ルーブルが急落し、それがロシアを揺さぶり、資源国を中心に世界経済を不安定化させることになりました。世界を不安定化させないためにも、プーチン大統領自身が国際協調に向かうとともに、欧米もロシアとの対話の中で国際協調の再構築を目指すべきでしょう。

 2015年は、明るい歳になって欲しいです。
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