keieishi17’s diary

40年余の経営コンサルタント経験から語る

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】  『未来年表「人口減少危機論のウソ」』 深刻な問題?

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】  『未来年表「人口減少危機論のウソ」』 深刻な問題?
 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。
 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。
■  今日のおすすめ
 
『未来年表「人口減少危機論のウソ」』
     (高橋洋一著 扶桑社新書
 
 
 
   著者が解き明かす「人口が減少しても何も問題はない」(はじめに)
 
 私達は、「2065年には日本の総人口が8800万人まで減少する。加えて2.5人に一人が高齢者となる。」と言う数字と、それと同時に発信される「人口減少危機論」を受け入れ、悲観的な危機意識を強く持っているのではないでしょうか。
 
 しかし、紹介本の著者は、「人口が減少しても何も問題はありません」「その理由を解き明かします」と宣言し、主に統計学的・数理的・論理的な根拠を示すことにより、本質的な真実を明らかにすると同時に、人口減少時代にこそ、私達が、正しい認識を持ち、「何を為すべきか」という前向きな姿勢で、様々な事態に対処するよう求めています。
 
 私達は、紹介本に巡り合えたことを「好機」と捉え、今まで持っていた「人口減少危機論」を白紙に戻し、著者の主張に耳を傾けると同時に、真剣に人口減少時代に向き合い、「何を為すべきか」問い直してみようではありませんか。
 
 卑近な話ですが、先日、千葉市立中央図書館に行って「人口減少」をキーワードに所蔵図書を検索してみたところ、6か月以内に出版された数冊の図書はすべて貸し出し中でした。紹介本もやはり貸し出し中でした。如何に「人口減少」課題への関心が高いかがわかります。唯一、図書館の書架に在庫としてあったのは、貸出禁止の「総務省平成30年版ICT白書『人口減少時代のICTによる持続的成長』」だけでした。
 
 この「白書」は、GDPの需要面から見た構成要素を「消費」「投資」「政府支出」「輸出入」と定義した上で、「人口減少時代」に国内市場が縮小していく中で、ICTによる需要・供給両面が増加する要因を二つ挙げています。一つ目は産業・業種を超えたICT「プラットフォーム」によって、データのやり取りが容易になり、BtoB、BtoC、CtoCの関係が変化し、新たな価値や仕組みが生み出され、「市場」が広がるとしています。二つ目はICT輸出・海外展開・インバウンド需要といったグローバル需要に対応した、態勢整備、グローバル需要の取込みへの創造的対応等により、「市場」が広がるとしています。「白書」の例は一例にすぎませんが、「人口減少危機論」に手をこまねいているのではなく、大きな構造変革・仕組み変革・新たな価値の創造への道を歩むことで、「人口減少時代」を前向きに乗り越える道があることを示しています。紹介本の主張する意義もそこに有ると思われるのです。
 
 それでは、著者が語る「人口が減少しても、問題の無い根拠」を、次項で、その一部をご紹介します。
 
「人口が減少による懸念事項」について「問題ない」と解き明かします
 
【人口がGDP成長率に影響を与える割合】
 
 著者は、「GDP=みんなの平均給与×総人口」と定義し、2065年に人口が8800万人まで減少した場合の、GDPの変化率を、微・積分的な計算式で、△0.7%程度との解答を出し、「この程度は、影響はほとんどなし」と結論付けます。つまり、この程度の減少は、前述の「白書」を例に上げ、ICTの活用等による生産性の向上等でカバーしてお釣りが出ると主張するのです。
 
【人口増減率と一人当たりGDP成長率は相関が無い】
 
 著者は、世界208か国の人口増減率と一人当たりGDP成長率(2000~2017年)をマトリックス(縦軸に一人当たりGDP成長率、横軸に人口増減率)上にプロットすると、△0.22の相関係数になるとの結果を示しています。つまり世界全体でいえば、人口増加は不味(まず)いが、人口減少は不味(まず)くないとの結論を導くのです。同様の手法を先進国に限って行うと、一人当たりGDPは、人口増減率と無相関との解答・結論を導き出すのです。要は、人口減少はマクロ的に見ると、全く問題ないと結論付けるのです。
 
【インフレ率と人口増減率、通貨増減率の相関関係】
 
 インフレ率と人口増減率の関係については、世界銀行のデータを使い、世界173か国の人口増減率とインフレ率(2000~2008年)をマトリックス(縦軸にインフレ率、横軸に人口増減率)上にプロットすると、0.1程度の相関係数で、ほぼ無相関との解答を示しています。一方、世界各国の通貨増減率とインフレ率(2000~2009年)をマトリックス(縦軸にインフレ率、横軸に通貨増減率)上にプロットすると、0.7の相関係数になるとの解答を示しています(相関が強い)。つまり、「人口減少=デフレ論」は統計手法・高等数学に弱い官僚・学者の主張であり、デフレは金融政策で対処できることに、これらの官僚・学者は、目を向けるべきだと著者は主張します。
 
【人口減少で社会保障は破綻しない】
 
 著者は、この問題について「破綻しない」という数理的に説明できる根拠を持ちながら、敢えて紹介本に示さず(ページが足りない)簡単に説明しています。現役世代が高齢者一人を支える人数は、「高齢社会白書2018年版」によると(単位:人)、2000年3,9、2017年2,0、2025年1,9、2065年1,3とされていますが、著者は『年金を支えるのは人数ではなく「人口×所得」の金額こそが年金数理上大切なのだ』と主張し、『人口が減少しても「人口×所得」の金額が減少しなければ、何ら問題は生じない。その様な政策・経営をしていく事で破綻を回避できる。』と主張するのです。
 
   「人口減少」を「チャンス」と捉えよう(むすび)
 
 今こそ「人口減少」を梃子に、今まで旧態依然と流れていた日本経済には、大企業病による「エンゲージメント」の低さと、それに伴う生産性の低さ等、改める点は山ほど有るのではないでしょうか。
 
 例えば3・6K(きつい、危険、汚い、給料が安い、休暇が少ない、カッコ悪い)職場を、新3K(給料がいい、休暇がとれる、希望が持てる)職場にAI・ICT等を用い変えていく事で、女性が働ける職場すなわち労働人口を増やして行く対応・変革をしている企業が増えています。「特定技能1級」の外国人労働者を受け入れる安易な法改正により、労働集約型職場を温存させる政策は、ポピュリズム政策ではないでしょうか。むしろ、労働集約型職場は淘汰され、資本集約・知識集約型職場が主流となっていく時代ではないでしょうか。それは「人口減少」を「チャンス」と捉え改革した企業が生き残り、従来の流れを温存した企業が淘汰・買収される時代に成っていくのではないでしょうか。
 
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